夏休みに帰ってきた娘がずっと読んでいたこの本。
戻る前に読み終えて、「面白いから読んでみたら?」と。
でもこの本、580ページもあり今の忙しさから読む暇ないよな〜、なんて思いながらページをめくったのですが、結局一週間ほどで読み終えてしまいました。
この本は2007年から2009年にかけて起こった首都圏連続不審死事件をヒントに書かれたフィクションです。
「首都圏連続不審死事件」と言われてもどんな事件だったか思い出されない人でも、木嶋佳苗と聞けば、あー、あの事件ね、と思い出すのではないでしょうか。
あれは衝撃的な事件で、今でもはっきりと記憶しています。
若くも、美しくもないのに複数の男性を虜にし、6人の男性殺害に関与、7名の男子に詐欺、窃盗、詐欺未遂を起こした事件でした。
本書は、男性にとりいられるべく努力を惜しまない容疑者・梶井真奈子と、仕事はできるが、女性であるがゆえに過酷な現場に身を置く週刊誌記者・町田里香との闘いの物語です。
拘置所での面会で、高圧的に語られる彼女の偏った持論に、町田里香はどんどん洗脳されていく。 里香も必死に記事を書いていくのだが、ラスト、これでもかというぐらいの反撃に合い、もう再起は不可能にも思える。 しかし里香は自分の中にあるこだわりを捨て見事に立ち直っていく。
梶井真奈子は、塀の中の人間にもかかわらず、あまりにも偏った持論を上から目線で語ってきます。
その高慢さに腹立たしさを覚えます。
そして読み進めていくうちに、お腹の中が重くなっていく、そんな感覚になりました。
それは梶井に対する怒りによるものでもありますが、その描写にも一因が。
なかなか本を読んでいてこんな感覚になることはないです。
そして料理の解説がものすごく量が多いことも興味を惹かれる一因です。
それを明確に想像でき、さらには実際に食してみたい、と感じてしまうところにも面白さがありました。
読了後、早速高級BUTTERを求めに行ったのは言うまでもありません。
柚木麻子さん、本屋さんで印象的なのは『ランチのアッコちゃん』。
装丁がとても印象的で気になります。
他にも気になる本がたくさん。
- 2008年に『フォーゲットミー、ノットブルー』で第88回オール讀物新人賞
- 2014年『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門賞
- 2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞、直木賞候補
- 2017年『BUTTER』直木賞候補
- 2019年『マジカルグランマ』で直木賞候補
次は『本屋さんのダイアナ』あたりを読んでみようと思います。